ベストセラー作家のひろさちや氏と、我が国新約聖書学の重鎮荒井献氏との対談集。新約聖書の記事を題材に、キリスト教の教義をひろさちやが「聞き出す」スタイルで綴られている興味深い一冊。そういえば、ひろさちやって前に家に泥棒に入られて現金をたくさん盗られていたなあ、という感じで軽く読み始めたが、中身は、なかなかどうして結構充実していて甚だ圧倒された。イエスがユダヤ教の律法主義から人間を解放したが、ユダヤ人の弟子のマタイは、師のことばを自分流に解釈し、改めて律法主義的な記述をして「先祖返り」してしまったという意見は大変興味深かった。仏教徒のひろ氏とキリスト者の荒井氏が、イエスと親鸞って実は結構似ていますね、という感じで意見を一致させていたのも面白かった。
一方、ひろ氏ほど聖書に詳しい人でも、そこに書かれていることを「信じない」ものなのだなあ、と別な驚きも覚えた。聖書に記されていることを読んで「知識として吸収すること」と、「信じること」とは、まったくもって別次元のことなのだと改めて認識させられた。やはり信仰とは「神から与えられるものである」とするしかないとか言ってしまうと、それはそれで(神を信じない人達から)怒られてしまうであろうが。
宗教に興味がない人にとっても、色々な意味で楽しめる一冊だと思う。