父親が倒れ、鳳来堂という古道具屋を継いだ音松だったが、商売に身が入らず博奕ばかり
していて店を傾かせてしまう。そんな時、将来を誓い合った男に裏切られた傷心のお鈴と
知り合い、ふたりは所帯を持つ。ある日、音松は橋から身投げしようとする男を助け、家に
連れ帰った。その男の抱える事情とは?表題作を含む6編を収録。
どの話も江戸を舞台にした、人情味あふれる話である。「ひょうたん」や「織部の茶碗」の
ように、地道な商売を続ける音松・お鈴の真面目な人柄を描いた心温まる話もあるが、
「びいどろ玉簪」のように、心がしめつけられるような話もある。虐待される子供たち。
そして、哀れな行く末。現代にも通じるとても切ない話だった。「貧乏徳利」にはラストで
泣かされた。音松とその友人たちとの固い友情は、どんな状況になっても決して変わること
なく続いていくだろう。ひとつひとつの話に味わいがあり、しかも、6編はひとつにしっかりと
まとまっている。面白い作品だと思う。それにしても・・・。作中でお鈴が作る料理は、とても
おいしそうだ。一度でいいから味わってみたいものだ。