補欠選手を主人公とし、現在と過去のシーンをバランス良く織り交ぜて、彼の友情、恋愛、家族関係を短い文章でテンポ良く描いている。友情・恋愛部分の展開や描写は若干平凡なものだが、野球の試合を描いた部分は読む者をうならせる。
「きれいな放物線を描く打球を見上げながら、僕はそのままベンチの背にもたれかかった。このとき、ある一点で打球と太陽が重なった。目が眩みそうになり思わず下と向く。瞬間、身体中の血が駆け巡った」(199頁)といった部分を読むと、著者の才能を感じる。また、主人公が相手チームのサインを見破るシーンは、読者を謎解きに誘い込む。
著者には今度スポーツ関係のノン・フィクションを書いてもらいたい。それにしても、甲子園球児に飲酒させたりタバコを吸わせたりと、それが普通の甲子園球児とは信じたくないが、高野連からクレームはなかったのだろうか(笑)。