寒い日に読むとホカホカな気持ちになりますが、最後はヒューッとした
風が肌をつきさす作品です。ただの風ではなく、人生という大きな時間の
中を通過していく悲哀をふくんだ風なので。
元になっているのは安房さんの童話とはいえ、大人が読んでも、いやむしろ
大人が読んだほうがより感じ入るものがあるでしょう。旅する風の子フーと
森で暮らす小さなヒメネズミ。線と点がガラスのストーブを介して出会う。
ちょっと離れるけど、SFであれば、同じようなことをウラシマ効果など、
科学的な事例とからめながら表現するところでしょう。子どもにも
判る身近な素材をつかって、こんな味を出すなんてみごと。加えて
降矢さんの絵からは場面ごとの空気がしっかりと感じとれる。
とてもぜいたくな作品です。
本物の風になる。その言葉が深く突きささってはなれません。