『別冊文藝春秋』の’06年3月号から’09年5月号にかけて長期連載されたものを加筆・訂正を加えて一冊にまとめた長編。
萩原浩の小説は、ユーモア小説、人情もの、ミステリー、人間ドラマなどジャンルが豊富で、どれもユーモアのオブラートにくるまれながらも現実を鋭く直視したその作風が結構面白いので欠かさず読んでいる。
時は今から13年前。県会議員の理事長が共に経営する有料老人ホーム「ひまわり苑」と「ひまわり幼稚園」が隣接していた。「苑」に居住する老人誠次や「園」に通う園児晴也たち「こぐま組」4人組のそれぞれの日常から、やがて『苑・園一体化施策』の名の下にふたつを隔てる塀が壊され、彼らは交流することになる。物語はまだ世間を理解できない5、6才の幼稚園年長組の子供たちと人生をリタイアした老人、そして彼らを取り巻く人々の言動がさまざまなエピソードを通してユーモラスに綴られてゆく。
しかし、そこには厳しい現実があった。後半に至り、元過激派学生だった片岡老人の現状打破・腐敗の告発のための「ひまわり苑たてこもり事件」に彼らは巻き込まれてしまう。
萩原浩が見てきたように描く園児たちや老人たちの行動は、時にはおなかを抱えて笑いたくなるほどおかしいが、本書が“熱血幼老小説”と謳われているとおり、最後にはそこはかとない感動が待っている。
本書は、たっぷり笑って、じんわりと胸に染みる、独特の、そしてお馴染みの<荻原ワールド>全開の力作である。