舘野氏と言うとフィンランドなど寒い地方を連想しがちです。
しかし、本書を読むと、舘野氏は南仏のセブラックに惚れこんでおり、
またタンゴなど激しい曲が好きであるなど、
いかに舘野氏が「熱い人」であるかが読みとれます。
本書は各地での演奏旅行のエッセーと
脳溢血で倒れてから復活するまでの道程を綴ったもの
から構成されています。
脳溢血の話を読むと、完璧主義の舘野氏の姿が垣間見られました。
ピアノは両手で弾くものである、というこだわりです。
しかし、舘野氏は両手で弾こうが、片手で弾こうが、
どちらでも美を紡ぎだすことはできるということに
気付きついに左手のピアニストとして復活することになりました。
ところで、バッハ作曲/ブラームス編曲「左手のシャコンヌ」について、
舘野氏が「むき出しの、これ以上は切り詰められない音がそこにあった。
音楽のエッセンスと言ってよいだろう」(229頁)と述べています。
ブラームス・ファンにとって興味深い言葉でした。