2010年6月の夏と2011年1月の冬の1週間、京都に泊りながら(夏は廃業となったホテルフジタ京都を定宿としています)ステキな居酒屋をたどるエッセイです。お洒落なバーでのやりとり、昔からある老舗の喫茶店の描写、お昼に食されるうどんの出汁の上手さや様々なランチ、その何れもが食欲をそそり、居酒屋の楽しさを感じられる名文で綴られていました。
『居酒屋味酒覧』の太田和彦さんが書かれた本は外れがありません。まして京都をテーマに「ひとり飲む」わけですから、ワクワクしながら読了しました。優れたお店を知り、その審美眼に適う店には、素晴らしい店主がいることも理解できました。
有名な割烹や料亭は登場しませんが、これらなら京都観光の中に組み込まれても間違いのないお店のチョイスですから、他のガイドブックはもたずにこの1冊を片手に京都の街を彷徨って欲しいと思いました。
朝の珈琲、昼のうどん、そして少しホテルで休憩した後、夕方繰り出す居酒屋のはしご、そこに登場するお店は、画一的なガイドブックには登場しませんが、地元の人に愛され続けてきたお店なのは確かです。
赤垣屋の客の雰囲気、鴨川の河原での学生たちの歌声、そして中扉のカラー写真の描写、宮川町の舞妓・ふく愛さんとの出会い、四条河原町阪急デパートの閉店後の利用方法、本隆寺から初天神への流れ、そして「味の居酒屋」でのお婆さんの手との触れ合いなど、飲んだことだけを綴った本ではありません。
観光地はほとんど登場しませんが、普段着の京都に近い姿が本書では見事に描き出されていました。太田さんの温かい人柄が感じられるような視点が好きです。
巻末に住所、電話番号が記されていますし、各文の後にそれぞれのお店で払った料金が記されています。参考になりますね。