蜂飼 耳さんの文章は、日経新聞の夕刊(2005年前半の火曜日)の連載で初めて読みました。言葉のひとつ一つが選びぬかれ、読んで心地よいし、見ても、漢字とひらがなのバランスがよく、「ああ、ひらがなってこんなにきれいなんだ」と思える文章です。特に連載初回の文章は、地下鉄の騒音の中でなにげなく読み始めても、引き入れられてしまうような魅力がありました。
作者の不思議な魅力は、日常生活のふとしたはずみで投げ出された不安定な感情を、みずみずしい感性で文章に定着させている点にあります。「ひとり暮らしののぞみさん」もそんな作者の感性がよくでた大人向きの作品です。絵も、文章に合っていて、気持ちいいです。
日々の生活で感じる孤独や不安定な気持ちは、一見明るそうな騒がしい知人に癒されるわけではなく、静かに共感できる人や本に癒されるのですね。きっと。