読後感としてまず思うのは、いかにも芥川賞の選考委員たちが絶賛しそうな作品だ、ということ。
平凡な日常を、鋭い感性で切り取り、卓越した表現力で生き生きと描き出している、からだ。
感性と表現力については、確かに絶賛したい。
才能のきらめきにあふれた、優れて文学的な作家である。
しかし、その作品を通して伝わってくるものといえば、だるく生きている主人公の、だるい日常だけなのだ。
主人公の心を満たす、殺伐としたつまらなさ。
周囲の世界は、彼女にとって実体を持ったものとして迫ってはこず、まるで影絵のようにうっすらとのみ存在している。
このような優れた作家が、このようなつまらない内容しか書き得ず、それをみんなで絶賛して喜んでいる、今の日本の文学の世界とは、いったい何であるのか。
心の奥底が冷え冷えとしてくるような、暗澹とした思いが残った。