著者最後のエッセイ集。取材中の経験や発見、出会い等が小品として綴られる。どれも凛として風格があり言葉に無駄が無い。「史実自身がドラマだから」と作り話を排し、史実を忠実に追いかける。結果として敗者にも公平な眼差しを向け、歴史の新たな一面を掘り起こして来た。また時代の大きな転換点とその端緒にはほんの数年しかないと言い、幕末の転換期と太平洋戦争とを重ね合わせる。「戦艦武蔵」から始まり晩年の桜田門、天狗党、彰義隊といった作品を通して、時代の転換期を嗅ぎ取る意義を伝えた。インタビュー中の「長崎の女はあぶねえ」とは彼にしては意外な発言だと思いつつ「粋」を感じた。下町っ子の「粋」があったればこそ、司馬遼太郎とは違った歴史が見えたんだと改めて思い至った。