この短編集の中でも「オラクル」と「ひとりっ子」は数学者としてのイーガンのキャリアがにじみ出た作品です。数学好き、量子論の奇怪さにセンス・オブ・ワンダーを感じる方には非常に楽しめると思います。
また、「行動原理」「真心」「決断者」「ふたりの距離」は、脳科学に興味のある方には、こんな書き方もあるのだと感嘆する要素でいっぱいです。
そして「ルミナス」ー数学者とは詩人であると感じさせる傑作です。
ただ、数学アレルギー、量子論なんてナンセンスという方にはちょっと取っつきが悪いかも。でも、すでに出ている『しあわせの理由』とか『祈りの海』を読んでいただければ、文学としても一級であることを感じてもらえると思います。
とくに『祈りの海』に収載の「ぼくになることを」ーアイデンティティの問題をつきつめた秀作です。