高校で同級であった40台の女性3人、それぞれバツイチの美々と牧子、独身のまま民放局でそれなりに名が売れているキャスター、トムさんこと千波の物語。三様の生き方を選択してきたこの3人が本当の姉妹よりも打ち解けあい頼りにしあいながら生きていく日常が細やかに語られています。この物語で素敵なのは登場人物たちが事に当たって、友人のため、友人の娘のため、あるいは自らのため本当に真正面から語りかけるところです。自分が尊敬してきた父親が実の父親でないことを知ってしまった美々の娘、玲にトムさんは諭します。「いい玲ちゃん、あなたにはお父さん、お母さん、それに私をふくめてあなたのことを大事に思ってくれる人が何人もいるのよ。でもお父さんには夫婦であるお母さんを別にしてあなた一人しかいない、だったらあなたの方がお父さんに気を使うべきだね」他人の娘の、こんな重いテーマに対してこれだけ真正面から語れるでしょうか。自分は一人で生きていけるとずっと考えてきたというトムさんのかなり長い独白があって「でもね、私が病院でわかれる時、牧子が生きていてという顔をしたのよ、私の腕を持って行ってもいいから生きててってね。そのとき私は思ったね、一人で生きているんじゃないんだって」「結婚式の時にいっておやり、お父さんありがとうって、それで十分なのさ」こんな会話があって、玲は父親との関係に自分なりの納得をすることになります。
人生の深遠な切片を何気ない日常のなかで淡々とかたりながら物語は進むのですが、中半から一気に緊張感を持った展開になり、ギンジローという牡猫しかいなかったトムさんに10歳年下の伴侶ができるのですが・・・・。
女同士、親子、大人と若者という異なった生活や背景をもった者同士の間でも、友情や愛がどれだけ悲しみや苦しみ、孤独からの救済になっていくかが声高にではなく語られ、読後に静かな感動にうたれる作品です。