この本はひきこもりを治すための本ではない。それは冒頭で著者によって言明されている。では何かというと書名の通り(日本)文化論なのだ。一読したあとではひきこもり自体について理解が深まった気がしたが、それについては他の著作の方が優れているだろう。むしろいま読み返してみると日本人論の色が濃いことに気づく。
ひきこもりという言葉はもう定着したと言える。が、定着した言葉は言う人、状況次第で様々な意味を持つようになる。たとえば「あたしゴールデンウィーク引き篭もってたんだぁ」のような軽い使い方、「あそこのお宅の○○くん、ひきこもりらしいわよ」のような重い使われ方(二例の語の運用に明確な意味はありません)。「ひきこもり」の意味をどう受けとっていいか迷う人も、この本で新たな感触を得られるのではないだろうか。私もその一人だ。
著者は古人が創作や山籠もりで引き篭もること(自分一人の時間を確保すること)を必要としたと挙げ、ひきこもりが方法として優れている点を示す。私もひきこもりは目的(到達点)にはならないだろうが、方法(通過点)としては特に忌避すべきものではないと思うようになった。さらに著者が例示する、臨床経験に裏打ちされた考察は説得力があり一般読者には読みごたえがあるだろう。臨床医としての若者観は、つぶやきの小ささを持ちながら見過ごせない強度が感じられる(118頁あたりとか)。
ちなみにレヴュアーは未読だが、ひきこもり治療を目的とするのなら同著者の「ひきこもり救出マニュアル」が挙げられている。