表題作「ばんば憑き」を含む6編の短編作。作者お得意の怪談時代物である。どの話にも深い味わいがあり、物語にのめり込んでしまう。とても読みやすい。さすがの文章力。「江戸物の金字塔!」帯に偽りなしだ。 どの話にも共通しているのは「恐ろしくて、温かくて切ない」ということだろうか。恐ろしい…ここで言う恐ろしさは霊や化け物を指してはいない。一番は人間の身勝手さである。個人的に好きな作品に「討債鬼」という話がある。詳しい内容は省略するが、この中で「金で人の命は買えましょうか」と悩み問う主人公に師匠が「買える」と答える場面がある。「買えるのじゃ。しかしおぬしは買わん。肝心なのはそこじゃ」と続ける。そこに綺麗事だけではない、人間の本質を見た気がした。 作品によっては過去の作品の登場人物(日暮しとあんじゅう)が出てくるがそれらを読んでいなくても十分に楽しめる作品なので、是非手にとってもらいたいお勧めの一冊である。