このCDの中核をなすのは,間違いなく「人間の顔」です.この曲のオリジナルは2群6声の混声合唱(合計12声)で,とてつもない難曲です.この曲をチェリスト12人で再現することの目的をどこに見出したのかは分かりませんが,非常に興味深い試みです.
この編成で人間の顔を演奏するもっとも大きな成果は,縦のリッチな響きが十全に表現されることでしょうか.人間の声は,どうしても低い音は聞こえにくく,楽譜から期待される縦の響きのバランスがどうしても上の声部に偏りがちです.また,高い音も人間の声より明らかに安心して聴けるということもあります.
逆に歌詞からの情報は全部抜け落ちるわけですので,曲の成立の意義を含めて,かなりの部分が犠牲になります.とくに,詩が大きい意味を持つ終曲「自由」では,総合芸術としての合唱の価値は大きく損なわれていると言っても過言ではありません.まあ,歌詞がなくても,「J'ecris ton nom」って歌いながら聴いてますけど.
したがいまして,「人間の顔」の,純粋音楽というより人間としての情熱を求めている方には,あまりお勧めしません.合唱版より明らかに,「しみじみ」としていますので.
逆に,このCDを買ってチェロの人間の顔を聴いた方には,ぜひともオリジナルの合唱版も聴いていただきたいです.歌詞カードをご覧になると,違った種類の感動を覚えることでしょう.プーランクは20世紀を代表する合唱の書き手で,人間の顔は難曲ですから,おおはずれの合唱版人間の顔はあまり心配要らないと思います.
他の曲に関しては,これほどの思い入れはないのですが,どの曲も美しく,チェロの均質なハーモニーが楽しめます.推薦します.