『はやぶさ』帰還から早や20か月。プロジェクトを冷静に振り返り、思い違いや説明不足などに思い至った川口氏が、再び筆を取ってくださった。
したがって本書は『
はやぶさ、そうまでして君は〜生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話』の補訂版と位置づけられようか。内容が陳腐化するに任せた書も少なくない中、これが使命と考えておられる氏の姿勢はぜひ見習いたいところだ。
氏は『はやぶさ』プロジェクトの“マネージャー”と紹介されるのが常だが、じつは“リーダー”役でこそ存在が際立っていたようだ。
以下、P.20より引用:
> まず自分の案を提案して、そのうえで「できるかできないかを検討してほしい」という言い方をしていました。自身に案を持たないで指示をすることは、やってはいけないという意識でいました。 <引用終>
何もかもを部下に丸投げしては、その部下が出す案にダメ出しばかりするマネージャーやリーダーに出会ったこともあるだけに、この一文だけでプロジェクト成功の理由がわかる気がする。
引用文が含まれる第1章の前半だけでも、「いかによいアイディアをメンバーから引き出すか」「意見を鼓舞して歩く」など、リーダーの心構えが多く記されている。
最終章で描かれる、さまざまな未来像を実現する若き人材の育成にも、こうした揺るぎのないリーダーシップが不可欠とのメッセージが力強く語られている。
「次の世代は日本を変えなければならない」との結語は、確たるリーダーシップも見せないまま『はやぶさ2』をウヤムヤにしてしまいかねない現政権への、痛烈な“鼓舞”あるいは“喝”と言えよう。
続々公開されている映画もカラーで紹介しており、本文中にそのシーンがいくつか挿入されている。プロジェクトルームの雰囲気を疑似的とはいえ再現し臨場感を高める、上手い構成だ。
でも、ところどころに映画の内容を否定あるいは訂正する記述がある。もしや、本書執筆の動機はこれら映画に“チクリ”とやるため、かも?