本書は、人類初の「小惑星への離着陸」を成功させた我が国の科学技術の精華
「はやぶさ」と、それを作った宇宙研(ISAS)の歴史を、コンパクトにまとめた
見事な作品である。実際、これまで我が国の宇宙開発に対して特別の関心が無
かった私のような者でも、その語り口の丁寧さに、引き込まれるように読み進
めることが出来た。本書に理科の知識は無用である。
ところが、「はやぶさ」が小惑星の表面物質採取に成功したか否かが現状では
不明であり、さらに帰還が非常に困難な状況にあることにつけ込んだアメリカ
が、一発逆転に賭けて全く同種のプロジェクトを立ち上げた。その名を「オシ
リス」というらしい。予算規模は「はやぶさ」の4倍以上である。
こうした成果の強引な横取りを阻止し、独自の宇宙開発をこれからも続けて、
科学技術の礎を担い、青少年に夢を与え、他国に振り回されるだけの脇役に転
落しないように、二代目の計画「はやぶさ2」が現在、宇宙研にて検討されて
いるが、誠に残念ながらこの世界の歴史に残る偉業の継続に対して、適切な予
算がつかないらしいのである。
それは一にも二にも「はやぶさ」計画が納税者たる国民に広く知られていない
からに違いない。そして政府、政治家、官僚その他、予算決定に影響力を持っ
た人達が、自国の誇るべき偉業にまるで関心が無いからに違いない。そうした
現状を打破するために著者は本書を書かれたのだと思う。「はやぶさ2」を実
現させる遠回りではあるが確実な方法として、私は本書を友人に勧めることか
ら始めた。このような著作が仮にベストセラーになったなら、それは国の中枢
に位置する人々も、知らぬ存ぜぬでは済まないだろうと思ったからである。