数年間ラノベから遠ざかっており、最近久しぶりに十数冊ほど手を出して読んだうちの一冊でした。
なんというか、最近のライトノベルに多い、文章の視覚的要素に頼った書き方というものがほぼなく、
文章自体も安定感があって読みやすく、会話も自然な感じでコミカルに仕上られており、
久しぶりに気恥ずかしさなくスラスラ読めるライトノベルに出会えた!
と、最後まで気持ちよく読む事ができました。
大まかな感想は以上の通りです。以下には、少し細かに感想を書いていきます。
後、少しだけネタバレ注意です。
良かった点
・異世界の魔王とその部下が、あるいは勇者が、現代日本で庶民暮らしをする上での、細かい所まで行き届いた描写
・魔王や勇者としての立場を上手く用いた、登場人物達のおかしな掛け合い
・小説としての完成度と値段に対する満足感
・アルシエル
気になった点
・ライトノベルとしてはどうにも地味で所帯じみてて(これは褒め言葉ともなりますが)、ターゲットの若者がこの内容に時めくかは疑問
・悪の権化であった魔王が良い人描写過ぎる違和感
(元の世界で本当に人類を殺戮してきたのかどうかすら疑わしく、例え人類の生活に触れ、理解したのだとしても、過去の血なまぐささはそう簡単には消えるものではないはず)
・それによる魔王自身、周囲の異世界関係者の小物臭
(正直異世界の出来事はゲームや演劇の話で、誰も死んでないし、裏で茶番を仕組んだ黒幕がいます、と言われても驚かないレベル)
・なぜか魔王や勇者が魔力を使えない状態の時に出た被害でも、一般人の犠牲者が0人だった事
(魔王達の到着前に暴れた分、魔力枯渇時に暴れた分等、後から建物直せばそれで済むレベルだったとは思えない。それとも魔王は蘇生術でも使えるのだろうか?それだとこの先何でもありになってしまうが…)
・上は、魔王よりも魔王らしく悪役をやっていたルシフェルを無理矢理仲間入りさせるための着地点だったのでしょうが、
あれだけ悪者道を突っ走って大したお咎めなしじゃ、勧善懲悪物としても微妙な感じです。
(魔王だからそんなの気にしないという考えならそれはそれで味があってよかったのですが、本作の魔王は正義感に溢れ過ぎていて到底そんな許し方をするとは思えない)
全体的には庶民派の親しみやすさとギャップによる笑いを重視して、全ての場面でそれを当てはめようとしたため、
本作の核心に迫る部分は緊張感がなく、シリアスな雰囲気を作る事がほぼ不可能になっています。
ですが、そういうものを求めず、のんびりとただ笑いたいという方にはお勧めの作品だと思います。
あと、恋愛描写はあるにはありますが、所謂萌え要素を求めている方には今のところあまりお勧めしません。
風呂敷を広げられる範囲が若干狭そうにも思えますが、次巻はこのままの流れでいくのか、ガラッと雰囲気を変えてくるのか、
少しだけ期待しています。