著者のアイミ氏は人形作家でありながら、自身の運営されているインターネット・サイト
「黒耀の鏡」において、自身が長年培ってきた創作技法を広く見返り無しに公開してきた。
このサイトは、球体関節人形製作の初心者や中級者の多くにとって、リファレンス的な存在で、
2005年の開設以来、実に約95万件のアクセスを誇っている。
本書はそんな著者が特に初心者に向けて新規に書き下ろしたものである。
書名には「はじめてつくる...」とあるが、中級者以上の人にも十分参考になる内容だ。
この本の素晴らしいところは、難しいテクニックを使わなくても、一定レベルの作品を作れる
よう道筋が考えぬかれていることである。ともすれば技法書は、結果を出す事よりもテクニッ
クそのものに重きを置きがちであるが、本書では、あくまでも人形を作ることを一義とし、
難しいテクニックを習得していなくても、造形に慣れていなくても、読み手たる製作者が
できるだけ戸惑ったり投げ出したりすることの無いように、深く心配りされている。
もちろん、初めて造形をするような人は、なかなか思い通りにいかない事もあるだろうし、
最後まで作り遂げるには、忍耐や試行錯誤も必要だ。だが、本書はそういった事に対して
身構えなくてもいいと教えてくれる。本書は、教本ではあるが、とてもわかりやすい上に、
見方を変えて読めば、人形を作ることの楽しみや喜びを、何も無かったところに、自らの手に
よって「人間なみに存在感のあるもの」が生み出されていく事の驚きや感動を教えてくれるので、
手を止めてしまう心配がないのだ。
そもそも著者は、製作技法を伝えることもさることながら、
何よりもまず「人形作りの楽しさを多くの人に知ってもらい」と強く思っているのだ。
だからこそ、冒頭のサイトが生まれ、この本が生まれた。
著者は独学で創作活動を行ってきた。誰かに師事して製作技術を教わることは無かったが、
その反面、好奇心旺盛で底知れぬ探究心で、あらゆる興味対象から幅広く多角的な知識を得、
そして幾多の試行錯誤を繰り返すことによって、まだまだ発展成長するのだろうが、
ひとつの球体関節人形の創作技法体系を構築するに至っている。
この膨大な積み重ねの中から、初心者に向けた選りすぐりの知識を惜しみなく投入したのが本書である。
この本を手に取り、あなたの手で、あなたの傍に、あなたの人形を作り出してみたら如何だろうか。