金融工学について本当に何も知らない人が読むにもある程度知ってる人が読むにも中途半端感が否めない本です。
新書という急ぎ足で金融工学の概要を伝えようとすれば厳密性が損なわれるのは当然です。本書では数学的解説が飛ばされてる箇所があります。よってある程度知ってる人には厳密であってほしいところがぼかされています。もしかしたらある程度知っていてそれでも腑に落ちない方はさっさとハードカバーの本に挑めばよいかもしれません。よってこの点において本書の評価の減点はしません。
しかし丁寧さ、すなわち初学者が必要とする理解の「落とし所」の部分も不足しています。「こう言ってもらえればわかるのにな」が薄いと言えば良いでしょうか。このような新書で金融工学の入門をやる本でそれが弱いのは致命的だと思います。よって何も知らない人にとっては「こういうことなんだ」というよりかは「こんな感じなのかな」という印象を与えそうです。
本書のなかで数学できる人できない人で解説を分けているのも中途半端さの一因です。
ただ新書の金融工学入門の本で行動ファイナンスと経済物理学について言及してる本は寡聞にして本書しか知らないので新書の重要なファクターである「目新しさ」はクリアできてます。偉そうな書き方で申し訳ありませんが、この点で本書は優れています。
ただこの本だけだと弱いので新書で知りたい方はもう一冊「金融工学、こんなに面白い/野口悠紀雄」をおすすめします。一冊で不十分って致命的ですけども。