著者は環境経済学の権威であり、一番の特徴は実例が豊富なことです。
世界各地でどのような環境問題が起きそれらがどう解決されたのかが詳
しく述べられており、環境問題に対する多面的なイメージをもつことができます。
ただ、実例が多い反面理論的叙述が少なく、またその理論的叙述も図や数式を用いな
い言葉によるものなので、幾分冗長に感じられます。理系人間の私としてはもう少し
圧縮してほしかったところですが、一般向けの入門書なので仕方ないでしょう。
著者の発想は以下のようにまとめられます。
まず大気、森、海などの自然環境を「公共財」とみなします。
公共財においては個々の主体が自由に振舞うと俗に言う「フリーライダー問題」が起
き、社会厚生は最大化されません。
これを解決するための「インセンティブ」を如何に与えるか
これが著者の基本思想です。
著者はインセンティブの与え方を
税金(ピグー税)
所有権の付与
規制
に分類しそれぞれについて論じますが、京都議定書の排出権取引で近年話題となっ
ている「所有権の付与」による解決を支持しているように思えます。市場の失敗の
代表例である「公害」や「乱獲」などの環境問題に、規制や税のようなトップダウン的
施策ではなく当の市場原理を導入する、この発想は多くの読者に新鮮な印象を与える
ことでしょう。