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さて、物語はこの小説の主人公「一乃」がニセの一分金を拾うことで始り、近所の「おあき」が誘拐され、なにやら贋金作りの気配もただよう。前半はひとつひとつの部品のような断面的なエピソードが一見脈絡なく並ぶが、それが後半すべての糸を手繰り寄せるようにひとつの物語りへと集結する。
圧巻は、なんと言ってもラストの長屋の面々による「おあき」救出作戦である。「一乃」夫婦に川漁師たち、おあきの兄の分吉、そして花火師の松次郎など刃物を持たない町人たちが、賭場の親分「寅吉」一家や極悪商人「松前屋」を向こうに回し、小便ちびりそうになりながらも見事な活躍を演じる。
そして、泣けるのは、この大立ち回りの前段、産婆さんの「お加寿」が今は鍵屋の棟梁になっている松次郎に助けを求めに行くくだりである。松次郎がお加寿の言葉に昔を思い出し(二人は昔わけありの仲)、すべてを捨てて救出作戦に加わる場面はとてもカッコいい。
何はともあれ、本作も読み終えたあとが清清しい、私にとっては「時代物のごちそうをありがとう」といいたくなる代物だ。
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