異世界から召還された若者がその世界を救うべく、強大な魔王と戦う。ファンタジー系のラノベではよくある設定の類かと思います。では、魔王を倒した勇者はその後、何をするのだろうか。これは、そういったことに焦点を当てた物語です。
まさかの「強くてニューゲーム」。テレビゲームでは、同じ物語を最初から繰り返すといった感じだと思いますが、このラノベでは全く新しい物語が始まります。それも、因縁はどうやら異世界で「勇者」となる前から続いているようです。これは発想の勝利と言えましょう。少なくとも、自分は初めてお目にかかる設定です。
異世界で魔王を倒してきた「はぐれ勇者」、暁月。「英雄色を好む」と言いますか、とにかくエッチな男です。手当たり次第に女性に手を出すような男ではありませんが、やるときはやります。もっとも、恥をかきそうになった相手を前にして進んで悪役になったり、ふざけた行動で相手の心を溶かそうとしたり、涙を見せる女性を前にいろいろ考えて行動したりとある種のフェミニスト的なものがあるのでしょう。少し古いですが、シティーハンターの冴羽りょうのようなところが若干あるかと思います。
そんな暁月とともに現実世界にやってきたのは、異世界の魔王の娘ミュウ。魔王である父の遺言に従い、暁月と行動をともにする彼女は、彼の妹、美兎として生活をすることに。父を倒した仇である暁月を憎む美兎。でも、そんな彼は、元の世界にいたままでは確実に虐げられるであろう自分を保護してくれた。ゆえに彼女は暁月の傍にいる。自分が傍にいるにふさわしい人物かを見極めるために。
この二人の関係、いいですね。自分が悪いと負の感情全てを受け止めようとする暁月と親の仇に救われたことに葛藤する美兎。今巻ラストで辛い想いを暁月に吐き出した美兎が、これからどう彼と接していくのか。現実世界で、生まれて初めて出来た友人たちとどのように付き合っていくのか。暁月の目的や活躍とともに、今後の見所といえます。
一つ心配な点は、「強くてニューゲーム」という設定上、強さのインフレはもはや不可避であることでしょう。ですが、そういったことを差し置いてもこの作品は面白いです。まだまだ暁月は実力の底を見せていないようですしね。また、いわば「クリア」した世界からの追手もある模様で緊迫感も増してきそうです。これは楽しみなシリーズがまた一つ出来ました。次巻も、期待して待ちたいと思います。