不覚にも私はこれまで鴨居羊子という作家を知らなかったが、この夏、この本に巡り会えて本当に良かった。昭和30年代に活躍したのであれば、かなり昔の人のはずだが、その感性のなんと新しく、なんとみずみずしいことか!特に彼女の動物たちに寄せる愛を綴った文章は、読むほどに魂に直接訴えかけてくるようだ。「一字々々の思いは、素朴な動物たちのかそけきうぶ毛の一本々々への慕情であろう」と彼女自身があとがきで述べるように、美しい日本語で、ほとんど動物たちと同化しているほどの深い愛が語られ、彼女の語る名も無きのら犬やのら猫たちは、崇高でさえある。自分もこの地球に生を受けた一生物に過ぎないという不思議な安らぎを与えてくれる、私にとっては、無人島でも動物たちがいて、この本さえあればいいと思えるほどの「この一冊」となった。