アメリカ・ニューヨーク州でウクライナ人の両親の間に生まれた児童絵本作家スロボドキンさんが今から半世紀前の1962年に著したユーモアが溢れる傑作絵本です。
スイスの山奥にある小さな村の小さな時計屋さんには、実は地元で密かに評判の名物「はとどけい」がありました。時計が一時間毎に鳴る度に、はとが「ポッポー」と飛び出すのを見るのが楽しみで村の子ども達は毎日学校帰りに立ち寄るのでしたが、実はお目当ては一羽だけ他のはとよりも一分くらい遅れて出て来る「駄目なはと」なのでした。時計屋のおじいさんは「いつかきっと治そう」と思いながらぐずぐずしている内いたずらに時が過ぎ、やがてある日突然この村にお金持ちのガラビアの国の王さまがやって来て大変な事が起きるのでした。
時計屋に立ち寄った王さまは、はとどけいがすっかり気に入って店にある時計を全部買うぞと言って老店主を喜ばせますが、でもあの一分遅れで鳴く一台をどうしても治さなくてはならない物凄くプレッシャーがかかる厳しい事態に追い込まれるのです。でも、はとどけいを長い間愛して来た村の子ども達の協力もあって見事に問題は解決されるのですが・・・・。おじいさんが最後に選んだ方法には、ちゃんとした技術的な理由はあるのですが、でも心の中にきっと「出来の悪い子ほど可愛い」という昔からのことわざにある感情がしっかりと根づいていたからこそ出された結論だと思います。完璧でなく不安で心配に思われる頼りない存在だからこそ、逆にみんなから愛おしく思ってもらえて大事にされるこの「ねぼすけ はとどけい」は本当に幸せな奴だなあと実感し大いに心が癒やされました。「作者はさぞや優しいお人柄なのだろうな」とうかがい知る事が出来るこの温かな素晴らしい絵本を、多くの方がぜひ大切に読まれます様にと強くお奨めしたいと思います。