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にんげんのおへそ (新潮文庫)
 
 

にんげんのおへそ (新潮文庫) [文庫]

高峰 秀子
5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

醒めた目をした人気子役時代、撮影所のヘンで素敵な人々、人生の店じまいの仕方……。心に残る事々を爽やかな筆で綴るエッセイ集
--このテキストは、 文庫 版に関連付けられています。

内容(「BOOK」データベースより)

撮影所の魑魅魍魎たちが持つ「おへそ」とは何か?そして、四十代から考え始めた「人生の店じまい」の心得とは?肉親との永年の苦闘の果てに手に入れた夫・松山善三との穏やかな暮らしを守る中で、女優にして名文筆家の高峰秀子が自らの歩んだ道を振り返りつつ示した矜持と鋭い人間観察眼。人生を味わい尽くす達人による、ユーモアとペーソスあふれる珠玉のエッセイ集。

登録情報

  • 文庫: 243ページ
  • 出版社: 新潮社 (2011/12/24)
  • ISBN-10: 4101369836
  • ISBN-13: 978-4101369839
  • 発売日: 2011/12/24
  • 商品の寸法: 15.7 x 10.8 x 1.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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28 人中、28人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By kh VINE™ メンバー
形式:文庫
 ヒイキになった魚屋に買い物に行く。めずらしく魚屋の主人が口を開き、ご近所のかたですか、とたずねる。いえ、麻布の永坂町からです、と答える。「それは、わざわざ・・永坂町には女優の高峰秀子さんが住んでいられますよね」「私、その高峰です。高峰秀子のなれの果てです」。

 このとっさの切り返しのジョークがすばらしい。ちなみに彼女は運転手つきの車で行くのだが、魚屋の店先に車を横づけにするようなお客ではないからと、店の手前10メートルほどの場所に車を停め、ぶらぶらと歩いていくのだという。

 このエッセイはここで終わりではない。魚屋に買い物にいったとき、和服の女の人に呼び止められ、ファンだといわれる。その人はベビー・カーに「天使か妖精か」というような愛らしい男の子を乗せている。2年後に、またこの魚屋の手前でその2人に出会う。ベビー・カーは小児用の車椅子のようなものになっている。子供というより少年といってもいい顔立ちの男の子が、毛糸のチロル帽をかぶっている。そして、その3年後にも、そこで銀色の車椅子に出会う・・・。母親と思われる女性は、高峰秀子と会ったことを喜んでくれるが、この親子とはこれ以上顔を合わせないほうがいいと決心する。そして、魚屋に買い物にいく時間を変える。このエッセイの題名は「午前10時30分」。

 彼女はいう。車椅子に乗っている理由を聞いてみても、少年の年齢を知ったとしても、私にはなにかしてあげられる筈もない。「いつかまた、あの母子に会うことがあったら、私はなにか余計なことを言ってしまいそうで、こわい気がする」。この潔癖さ。このときの彼女の甘ずっぱくて苦い思いこそ、人間のオヘソにつながっている。しかし彼女のこの態度を誤解する人や、それとはまったく正反対の態度をとる人も、世の中には多いはずだ。ぶっきらぼうのようでいてぬくもりのある文章には、人生の叡知がつまっている。

このレビューは参考になりましたか?
8 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By sirou55 トップ500レビュアー
形式:文庫
心臓カテーテル検査をした。検査入院だが、血管に細いところがあればステントを入れて広げる治療をするという。別に命に関わるような大それた検査ではないが、入院するときに持っていった本の一冊がこの本だった。万が一何かあったとき、それが生前最後の本になるとしたら高峰さんの本なら悔いはないと思ったからだ。
書かれた内容は昭和63年から平成10年までに雑誌に掲載された随筆が13編載っている。相変わらず文章はうまい。「ひとこと多い」は「わたしの渡世日記」での養母とのやりとりをかいつまんでまとめてあるが、最後から当時の著者の心境がうかがえる。「ただ今自分と出会い中」は著者の老いへの向き合い方を教えてくれる。
このレビューは参考になりましたか?
3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By いせむし トップ500レビュアー VINE™ メンバー
形式:文庫
高峰秀子の没後1年です。
新潮社から数冊の高峰秀子の著作が新潮文庫で再発売されました。

本書「にんげんのおへそ」は、
昭和の終わりから平成10年までの期間に書かれたエッセイです。
老いを見つめた当時の生活の様子や、
撮影所での逸話や継母との関係などの昔話が並んでいます。

みごとな文章です。
本書に人生の終わりに備えて無駄なものを整理するエッセイがありますが、
文章も無駄がなく、
淡々と思いをつづる丁寧さやその背後にある慎ましさ、まじめさが、
心を打ちます。

虚栄を求めず生きた稀有な女優さんです。

一歩退いて、でもしっかりと観察し、さめた批評をポツリともらす。
そんなところが、高峰秀子のエッセイストとしての個性だと思いますが、
撮影所の魑魅魍魎を描いた「にんげんのおへそ」が、
当時の映画産業の活気と木下、黒澤両巨匠の素顔を描いていて、
まさに高峰秀子的で、面白く読めました。
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