本書は、1990年の入管法改正により、「日系人」であれば、入国・就労が可能となる措置が導入されたことに伴って、来日し主に単純労働に従事する日系人に対する、インタビューを行い、特に、日系人であることを装って来日していると思われる者に関する事柄を中心に取りまとめたものである。
「日系人」に関する調査などは、社会学者によって実に好んで行われてきたが、本書は、単に「にせニッポン人」に関するルポであるのみならず、送出側のさまざまな事情、そして制度が意図することと、それを活用する個人の意図とのズレ、さらにはさまざまな現場の現実が明らかにされている。この意味で、社会学者による問題意識や方法論が極めて陳腐な「調査」と比較して、その意義は十分に大きい。
さて、「にせニッポン人」というのは、明らかに、安易に日本で就労・送金・蓄財するために、全く日系人でないにも関わらず、書類を偽造して、入国・就労している者であり、著者はそうした人々を明らかにしようとするのだが、そもそも「日系である」ということが、本人自身から判明できることでも何でもなく、単に祖父や父が「日本人であった」ということしか基準でしかないため、その境界は極めて曖昧であるということだ。さらに、これは他の途上国でも全く同様であるが、官僚機構が腐敗していることから、平然と、虚偽であるが、本物の偽造文書が発行されるという事情が、こうした状況にさらに拍車をかけている。
また、実際に日本に来ている者には、母国でも十分に生活が可能な者が多く、高学歴な者も少なくない。しかし、極めて安易な「実質的単純労働者導入政策」によって、為替レートの格差を利用して、「一攫千金」を夢想して来日する者を多数生み出したことも明らかとなっており、人的資源の適切な活用という意味で、母国、そして日本に与えた影響は実は破壊的であったことも指摘できるだろう。