筆者の城島充氏は「拳の漂流」「ピンポンさん」と秀逸な作品をすでに世に発表しているノンフィクション作家である。そんな彼が児童書を書いたというので、気になって購入した。阪神大震災の前日から物語は時系列に沿って進んでいくのだが、一瞬の揺れで大切な命を失った家族の悲嘆が、子どもたちにもじゅうぶん理解できるようなやさしい筆致で綴られている。15年の歳月をかけて、残された家族はどんな思いと向きあってきたのか。2人の子どもを亡くした悲嘆は決して小さくならないが、いっぽうで新しく生まれた二つの命が、新しい家族のありかたを夫婦に問いかけてくれる。『人生は生きるに値する』。深い悲しみの淵に沈みながら、父親の勝之さんがそう思えるようになったのは、姉そっくりの風貌をした妹や、兄のランドセルを背負う弟の存在だけではない。短い生涯を閉じた二つの命のなかにそのことを見いだすことができたところに、この物語の強くて重いメッセージが込められていると思う。
もちろん、子どもたちにぜひ読んで欲しい作品だが、親たちにもぜひおすすめしたい。児童書でありながら、そうした読後感を抱くのは、やはり城島氏の卓越した筆力のせいだろう。本格的なノンフィクションだけではなく、こうした文体で一つの世界観を描ききり、夫婦のメッセージをしっかりと伝えきったところに、彼の才能の深さをしった。ちなみに私の姉は何度も涙を流しながら本著を読んだあと、小学6年生の娘に手渡したという。
震災から15年がたった「今」だけではなく、長く読み継がれる本になると思う。