伊勢物語のエピソードと歴史的事実をすりあわせながら、伝説のプレイボーイの物語を、軽く、楽しく展開することが作者の意図だ。その通りに、予想以上にさっくりと読み進むことができた。
歴史的な事実や人名を把握していなくとも、十分に説明がなされており、気にせずに小説として楽しむことができる。もっと把握しておきたい人には、巻末に系図も用意されている。
この時代の貴族で色男となると、当然のように和歌が出てくるが、それもわかりやすい現代語に翻案されて詠われており、すんなりとやり取りを味わうことができるだろう。
伊勢物語には手が出にくいという人にも、これならすらすらと読めることは間違いない。
肩肘の張らない時代モノの恋愛モノ。だが、無常感をそこはかとなく感じてならなかった。
一番の恋の顛末は、残念ながらハッピーエンドとはならない。その人生もまた。