文楽の浄瑠璃語りの名大夫、自ら一代記を語る、その語り口がすばらしい。
生い立ちから修業時代へ、戦争をはさんで、大夫としての血のにじむ日々を、
軽妙洒脱に語ってよどみなく、いささかのてらいもありません。
練り上げられた大阪弁が、こんなにも豊かに情感を伝えるのをはじめて聞きまし
た。ひょっとすると、こういう大阪の土地の香りを含んだ語り方のできる人は
住大夫が最後かもしれないとさえ思い、堪能しました。
文楽には無知な者ですが、先日ラジオのトーク番組で大夫の語りを聞き、その
見事な話術に魅了され、早速本書を買って読んだ次第。
本の題名は、人間国宝に認定された時、薬師寺管主高田好胤が大夫に贈られた
色紙から。「おくふかき かたりのわざを ただただに みがききたりて
今日のいさほし なほになほなほ」