大人向けのゲームが原作であるとのことですが、当アニメ版は家族でも十分楽しめる穏やかな内容に仕上がっていると思います。あえてそういう風に作り上げられたことに好感が持てますし、その点では非常によく出来ているファンタジーの良作であると言えるでしょう。絵も美しく、また12話と短い尺の中に歯切れ良く緻密なストーリーがすっきりとおさめられている点においても抜群の構成力を誇る作品です。
「ネタバレの部分がありますので注意してください」
不器用で人付き合いの苦手な少年と少女が共に不思議な出来事を経験していくうちに、互いに対し純粋な恋心を抱いていくというのが物語の骨子。このあたりは恋愛ものにありがちな一つの定石通りなのですが、設定の面白さとプレゼンテーションの美しさは特筆に値します。特殊な宇宙観とそのことわり、不思議な力とそれに課せられた制約、摩訶不思議な変身とそれにまつわる諸々のルールなどなどのありかたが絶妙。そう、これは全編に実に巧みに配された多様な決まり事やルールが面白さを倍増させているアニメーションと言っても過言ではありません。そのあたりはやはりゲームが原作という利点が最大限に活かされているのでしょう。
また、こうしたルールを踏まえた上での物語のプレゼンテーションが美しい。不思議な力を宿す星のしずくを人助けのために一生懸命集める泣き虫な少女すももと彼女の一途な優しさに魅かれていく人には言えない秘密を持った少年正晴の切ない胸の内の描写がとても繊細。様々なルールにコミュニケーション上の制約を強いられつつも、少しずつ互いの心の距離を縮めていく不器用だけれども誠実な若者二人の姿がとても微笑ましく愛おしい。また、すももの親友で思いやりのある撫子、すももにライバル心を抱きつつも真っ直ぐなノナ、全ての秘密をなぜか知っている穏やかな教師ナツメをはじめ、すももと正晴の周りをとりまく仲間や家族が誰も皆愛情に満ちていて嬉しい。たとえ何もしてあげられなくても、心から信じてあげること、苦しいときにも傍らにいてあげること、愛する人が自分の力で試練を乗り越え幸せになれるように支え見守ること、そんな素敵な生きてゆく上での美徳が登場人物全員からやんわりと、そして無理なく伝わってきます。
悲しい展開や切ないエピソードも随所に配されていますが、それにもかかわらず徹頭徹尾善意が込められ愛と優しさに満ち溢れた、これは青春のおとぎ話。子供から大人まで多くの人が共感できる良きアニメーションです。