ル=グゥインって、こんなのジョークが好きだったっけ? なんて思わせる連作短編集。ふと、空港で待っていたら、次元移動の方法を見付けてしまい、それからは次元を移動するころで、目的地に早くつくことができ、さまざまな違う次元を訪れることも可能になった、そんな世界のお話。といっても、そもそもからして飛行機(plane)と次元の移動(plane of existence)の駄洒落だったりする。
構造としては、ハイニッシュ・ユニバースよろしく、それを大宇宙という空間ではなく、たくさんの次元ということにした、ささやかなもの。したがって、次元ということに名を借りて、さまざまな世界が描かれる。植物人間の世界、言語を持たない世界、さらにはイースター島やクリスマス島といった現実に存在する島を借りた風刺の世界まで。とっぴな世界ということでは、ハイニッシュ・ユニバース以上、世界を描くにあたっては、「オールウェイズ・カミング・ホーム」で遺憾なく発揮された文化人類学的センスが満載。「アメリカ人は竜が怖いか?」と、かつては問いかけた彼女だけれども、おそらく現在は、アメリカ人そのものが不条理な世界に身を置いて、竜のようにふるまっている、そんなことを感じているのではないか。それを、多様な次元、多様な世界と比較したときに、こちらがわの次元だって、けっこう変なんじゃないか。それぞれの物語には、そんな気持ちが込められている気がする。
というわけで、ささやかだけれど、ル=グゥインの魅力満載の本、ということになる。まあ、「ゲド戦記」のような物語を期待する人はいないと思うけれども。