疑似科学本のあふれる現代。相対論をわかるように、正しく書くことで、こうした嘆かわしい
状況を打破したいとの専門家の手になる熱意あふれる本です。
第1部特殊相対性理論と第2部一般相対性理論に分かれ、各部がさらにいくつかに分かれて
解説されます。
教科書としてではなく啓蒙を主な目的とする本は、しばしば数式を使わず図と言葉だけにた
よるので、かえって文脈が不明になることがあります。
本書は、適切な形で図解と数学的な表現をもちいていて、全体に、とても読みやすい本に仕
上がっていると思います。
特に、3章でのミンコフスキー時空の解説がわかりやすいと思いました。たとえば斜交座標の
縦軸をctに選ぶのは、時間を長さの単位ではかることだとか、斜交座標の単位の決め方など、
明快です。
それから2部では、曲線座標系における線素とメトリック・テンソルのところ、つまり、ミンコフ
スキー時空の「計量」の説明がとてもわかりやすいと思います。
ここから7章の時空の曲がりを測る「曲率テンソル」の話になるのですが、このあたりは、
詳細が付録に回されたりして、残念ながら文系シニアの身では、すこしわかりにくい気がし
ました。
しかしながら、全体に、相対性理論のなりたちを、もっとも明快に解説した本であることは
間違いありませんね。