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この本を読んでいて一番ハッとしたところは、デロンギヒーターを売ったときに学んだ「使用価値は自分(売り手)が考えてもいい」、というくだりです。
デロンギヒーターは、今では売れ筋ベスト5に必ず顔を覗かせる大ヒット商品ですが、販売当初はさっぱり売れなかったそう。当時は、エアコンや石油ヒーターの補助暖房としておすすめしていました。
ところが、寝室での主暖房として紹介する(使用価値の転換)ようになってからは、デメリットに感じたゆるやかな暖かさが逆にメリットになったのです。空気を汚さず喉を痛めない点も追い風になりました。
机上の空論でもなんでもなく、実際の体験から語られる言葉はとてつもない説得力を持って読み手である僕に迫ってきます。著者が通販生活の産みの親だということがつくづく実感されるのでした。どこか眼に入るところに置いておきたい本の1つです。
私はただの消費者で、また、とくに「通販生活」ファンでもありません。立派だし、面白い(とくにナンシー関晩年の傑作「記憶スケッチ」とか)と思いつつも、市民運動版「クロワッサン」のようにみえてやや敬遠してた、という立場です。
が、この本を読んで、はい、参りました、降参、でした。
よく経験し、よく考え、また、労を惜しんでないんですね。「通販生活」は一夜にしてならず、という杉山さんの言葉どおりでした。
また、そこから生まれる「小売」の可能性(いいかえれば「消費」の可能性)にも驚かされました。
おなじみデロンギヒーターやメディカル枕などのエピソードは、自慢も裏話もさわやかです。ユーモラスな語り口がよいです。幅広い引用(明治期の通販雑誌や今和次郎など)も楽しめます。
実用書としても読み物としても、ぜひお勧めです。
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