従来の日本の法制度が犯罪被害者の経済的・医療的支援や「知る権利」などをいかになおざりにしてきたか、それがどう改革されてきたか、いまだ課題として残されているものは何か、釈放後の再犯対策、お礼参り対策などもいかに不備か、を知るうえでは、よい本である。
ただ、「足利事件、布川事件のような冤罪事件、志布志事件のようなでっちあげ事件を顧みれば、被疑者・被告人の権利を守る上で警察・検察側に不備があったことも明らかで、一部の人々が、それを憂えるあまり、被害者保護の問題に消極的になってしまったことは、理解できないわけではない。代用監獄の廃止、取り調べの可視化など、犯罪捜査面での制度改革も必要であることはいうまでもない」とでもいうような記述が少しでも含まれているならば、この本をバランス感覚のあるフェアな本として☆5個を進呈できたであろうに、それがまったくなかったのは、残念だ。
題名のように『なぜ被害者より加害者を助けるのか』と言ってしまった段階で、すでにしてひとつのバイアスがかかる。憲法31条〜40条の制定以来、法の理念は「被疑者・被告人の人権を守る」ことである。これを「加害者を助けている」と表現してしまうと、庶民感情は「法が悪人を手厚く保護するとはけしからん」→「あんな手厚い保障はいらない」→「警察・検察はもっとズケズケとやれ!」という方向に流れてしまう。本書の叙述態度の中に、意図的にそういう誤読を誘発したい願望が、チラホラ透けて見えるように思ってしまうのは、はたして私の杞憂だろうか。