本書は、長崎県内の私立男子小中学校に22年間勤務されていた経験をお持ちの
著者が、その経験もとに、研究報告にも参照・言及しながら、「男女別学」の
意義を説いたものである。
近年、男子校、女子校で一部の「有名進学校」を除き、人気を落としている
ところも多く、伝統ある学校でも共学化に踏み切る流れが見られるのが現状であろう。
本書は、このような流れの中で「男女別学」の意義を説いた点で、大変興味深い。
確かに、広く認識されているように、英文科等の語学学科では毎年女子学生が多く、
工学系の学科では毎年男子学生が多い。しかも、この現象は単発的に起こるわけ
ではなく、毎年ほぼ例外なく起こる現象である。また、赤ちゃんの段階からすでに
男女で興味を示すものが一般的に違うことは以前より指摘されていることである。
これらは、とりもなおさず、男女の脳を中心とした機能に「何らか」の違いが
あることを示しているわけである。
ということは、「男女の違いに特化した、よりきめの細かい」教育というものが
あってもいいはずだ、という著者の主張は正鵠を得たものであり、説得力を感じる。
実際に、一部の有名進学校は学習面での成果を上げていることは間違いない。
それに、本書でも指摘されているが、フェミニズムの影響が強いアメリカでも、一時
は全て共学で学ぶことになっていたものが、ここ近年、落ちこぼれをなくすための
方策として男女別学の措置が認められたことは、注目に値すべきだろう。
また教育の多様性という観点からいっても、昨今の共学化一方向への流れは、
(私立なら特に)経営上仕方がないとしても、教育の多様な機会の提供という観点
からは望ましい方向とは言えないだろう。
著者は、男女別学の意義を、勉強面や全人教育の点等から、経験と研究を基に、
一般論と各校への取材を通した具体論もまぜながら主張している。主張の中には、
原因を「男女共学か別学か」の問題に落とし込みすぎていると感じるものもあったが、
全体としては中庸的に書かれており、何よりも書籍が少なく議論が必要な分野での
テーマであるため、興味深く読めた。