つらいことが続いた。生きていくことがつらくなった。そんな中で学生時代に愛読した坂口安吾の言葉を集めた本書を読んだ。
坂口安吾は「ただ、生きているだけだ。それだけのことだ」(22頁)「苦しめ、そして苦しむのだ。それが人間の当然な生活なのだから」(58頁)「元より人間は思い通りに生活できるものではない。愛する人には愛されず、欲する物は我が手に入らず、手の中の玉は逃げ出し、希望の多くは仇夢で、人間の現実は概ねかくの如き卑小きわまるものである」(44頁)と否定的に説く。一方で「悲しみ、苦しみは人生の花だ」(53頁)「人間にとって、人間以上に美しいものがある筈はない」(28頁)とも説く。それなりに成功し、それなりに幸せだった自分の人生における幸福を所与のものと思ってしまっていた自分を恥じ、「人生とは銘々が銘々の手でつくるものだ」(32頁)という当たり前のことに改めて立ち返り、「独自なそして誠実な生活を求めることが人生の目的でなくて、他の何物が人生の目的だろうか」(45頁)という言葉にかつての自分を感じた一冊だった。BGMで流れている、本書とおよそ違う価値観という認識だったブルックナーの交響曲8番、9番と価値観が調和した気がした。