戦争をものを見たり考えたりするひとつの存在ととらえ、擬人化した
アリス・ウォーカーの視点はユニークですが、それよりも、
絵を描いたステファーノ・ヴィタールの想いのほうが気になりました。
戦争のおそろしさを伝えるためとはいえ、制作中はかなり
辛かったのではないでしょうか。
豊かな大地でのどかに暮らす村落の人々…
母親にだかれて幸せそうな子ども…
さまざまな動物たちが生きる美しい自然…
いづれも本書に登場する印象的なシーンです。
木目を生かし丁寧に描かれた画面は、どれも心温まる絵本から、
みどころのワンシーンを抜き出してきたかのごとく味わい深いものです。
ところが! その画面を破壊してしまうのです!
ページをめくると、突如画面に侵入してくる異物によって。
鉄の大車輪、金属の破片、打ち付けられた釘 などなど。
圧巻は汚物の固まりで描かれた怪物がむくむくと首をもたげるシーン。
食事中によむと、吐き気をもよおすかもしれません。
感性のするどい子どもは絵だけで泣き出してしまうでしょう。
しかしこれらは絵の中だけのことではなく、現実の世界という
キャンパスでも起こっている事実なのです。
一枚一枚のページをこれほど重く感じたことはありませんでした。