世の中に衝撃を与えた「光市母子殺害事件」についての一冊である。
我々は報道を通じて、事件を知り、そして被害者の無念を感じ、司法の限界を思い知らされ、少年法や死刑制度に対して考える機会を与えられた。
幸せな家族が一瞬で不幸のどん底に落とされる。
大病を患い、人生に夢や希望を持つ事を半ば諦めていた青年が1人の女性と出会い
学生結婚。そして授かった命。幸せはある日突然とある未成年によって破壊される。
青年は戦い続ける。当初は警察の耐え難い取調べやマスコミの好奇にさらされ、犯人逮捕の後は少年法の壁に打ちのめされる。
しかし彼は戦いをやめなかった。その姿がテレビで映されるたびに我々の中に青年に対する応援の気持ちそして少年が友人に送った手紙が公開されるにあたり、少年に対する怒りがわいてきた。
報道によって、世論や法律が動かされたのも事実である。
我々が見ていたのは理路整然と闘う本村さんと荒唐無稽な言い訳で逃げようとする加害者という構図のみである。
しかし、捜査関係者(警察や検察)がまさしくほぞをかむ思いで捜査を続けてきた事や彼らの中の怒り、「永山基準」にしばられ自分の感情と反する判決を出さざるを得なかった高等裁判所判事の葛藤)、又被告に対し「万死に値する、死んでほしい」と発した言葉は単純な復讐心のみではなかった、というのが
この本を通じて伝わってきた。
とくに印象的だったのは、本村さんがアメリカの死刑囚を訪ね、死刑制度について考え、迷うところ、そしてラストの著者による被告人のインタビューである。
被告の心も本村さんと向き合う事によって変化があった、そして罪を認識してきているのではないか、そのように感じた。
著者は弁護人にもコンタクトをとろうとしたとは思うが、それは拒否されたのだろう、弁護団については表面的な筆致に留まったものの、彼らの中での混乱は伝わってきた。
この事件が確定(最高裁判決)するにはあと数年かかるだろう。
しかしこの事件は多くの人にさまざまな事を考えさせた。
本村さんの無念はどんな判決が出ても癒されず、心が晴れることはないだろう。
この本を読んで何度も涙した。なんでもない第三者の私ですら目をそむけたくなる事件であった。
それでも読んで、色々考え、司法の矛盾点に目を見ける機会を与えてくれた本であった。