第一線の日本語研究者が執筆する「もっと知りたい! 日本語」のシリーズの中でも、群を抜いて「実用書より」な一冊です。
本書では、お店でお客さんを誘導する案内表示やDMのお知らせ、ビジネスメールといった具体例を提示します。その具体例を「今の文章では伝わらないので、こう改善すべきだ」指摘することで、伝わりやすい文章とは何かが学べるようになっています。指摘の内容は文章の構成、単語の選び方にとどまらず、「こういう場合は図を大きく使うべきだ」「今回は言いたいことを絞って、残りは切り捨ててしまうべきだ」などといった点にも及びます。また、「日本語」とは言いながら、指摘の対象は時刻表などにも及びます。
一方、指摘が体系的になっているわけではないので、組織だった知見が得られるというような形にはなっていません。一応、「伝わらない三つのパターン」として「1.相手の状況を考えていない」「2.相手の反応を予想していない」「3.相手に伝える工夫をしていない」という3点を挙げていますが、個々の指摘がどのパターンにあたるかなどの解説はあまり見受けられません。また、自分が文章を書くときに注意すべきチェックリストなども用意されていませんので、読んだ知識を実際に生かすには、読者の工夫が必要です。また、指摘の根拠も、分かりやすいか分かりにくいかというある種の主観に拠っているので、他人の文章を直させる際の根拠付けとして使うのには弱いかもしれません。
ちなみに、著者のサイト(著者名で検索してください)の「著書・論文」のコーナーには、この本の序盤10ページ分と、ボツにした「あとがき」が掲載されています。それらを読んでみてから購入を検討しても良いでしょう。