著者の「ラーメン屋vs.マクドナルド、エコノミストの読み解く日米の深層」が面白かったので本書も読んでみた。
資産価格のバブルや金融危機が起こるメカニズム、金融・財政政策による不況対策の効果と限界などが、経済学の基礎的な概念をベースにしながらも筆者オリジナルの視点で展開している。平明な論理とデータに基づきながら、目からウロコが落ちる結論に導いて行く面白さは「ラーメンvs.マック」と同様だ。
私が一番興味深かったのは、3章の「アリの集合的知性と人間の集合的愚性?」だ。市場の機能、問題解決能力と、アリ(蟻)が集合的に発揮している問題解決能力(具体的にはエサの発見と巣への運搬)との類似性を紹介している。それ自体は他の研究者の指摘だが、著者はその「アリモデル」に資産価格と私的所有権という要素を加えることで、市場の集合的知性がバブルとその崩壊ももたらす「集合的愚性」に転じる仕組みを鮮やかに描いてみせる。
著者のメッセージを一言で表現するなら、バブルとその崩壊に翻弄されない知的体力、健全な懐疑精神を身につけよう、ということだろうか。
各章の見出しは以下の通り。
序章 地下鉄の通路のバイオリン弾き
1章 マネー資本主義批判という誤解、金融投資立国論という幻想
2章 なぜ人は市場に踊らされるのか?
3章 アリの集合的知性と人間の集合的愚性?
4章 ベビーシッター組合と景気対策
5章 日本人はなぜアメリカ経済の本質を見誤るのか?
6章 バランスシートがわかれば世界がわかる
終章「みなさん、そうされていますよ」という呪縛から目を覚まそう