著者は心理学者で、人は偽の記憶を作ってそれを真実だと信じることがあるか、という研究をしてきた。学生の頃はレイプを題材にし、批判をあびた。その後、レイプほど話を聞くのが辛くなく、真実ではないと確信できることを題材にしたいと考え、アブダクションを信じる人を研究対象にした。つまり、彼女は始めから宇宙人が人間を誘拐などしたことはないという前提で、「なぜ人はあり得そうにないことを信じるのか」という研究について主張を展開する。
彼女によれば、アブダクションを信じているほとんどの人は、体にとても異常な面があったり、寝ている時に物凄い恐怖体験をしたり、(記憶のない空白の時間など)理解できないことがあり、相当な精神的負担を抱えているということが共通しているそうだ。彼らは「痛みや悩みの根源を理解したい」と願い、催眠術にたどり着き、催眠によって「失われた記憶」を思い出し、誘拐されたと信じている。
しかし著者は、人間の記憶の脆さを指摘する。過去について細かに思い出そうとすると、人は記憶を「取り出す」のではなく、「再構築する」力しかないと主張している。だから想像したこともまるでそれが真実に思えてくるのだそうだ。催眠術を使わなくても、宇宙人映画を見たり、アブダクション体験記などを読むと、自分の経験した不可思議なことの原因は、「きっと誘拐されたに違いない。そしてその時の記憶を消されたに違いない」と思えてくるそうだ。
こんな彼女の巧みな論調に、思わず納得させられてしまった。彼女は、アブダクションを信じることと、信仰を持つことに共通点があると言う。宇宙人も神も、目に見えない存在であり、私達よりも優れた力を持ち、私達を見てくれているという考えは、「人間の願いの表れであり、そう思うことでとても支えられている人々がいる」と論じている。
とても面白い研究題材であり、分かりやすく書かれていたので星5つ。