上司がしばしば理不尽なものである理由やその対処法をメインとしたようなタイトルだが、内容として断然おもしろいのはむしろ、企業がしばしば倫理を無視するような行動をしてしまう理由を「エージェンシー理論」「取引コスト理論」「所有権理論」などといった、最近の経済学の考え方を用いて解明を試みている部分だと思う。
企業はしばしば不祥事を起こすが、外部からみたらどれほど不道徳で愚かな行動にみえても、その企業、またその内部にいるものにとっては合理的な行動である場合がままあるという点が議論の核。
たとえば不二家が賞味期限切れ牛乳を使った件については、どうせ消費者はうちの菓子製造プロセスなんてしらないから(!)、1日くらい期限を越えたのを使ってでも、それでコストを抑えて儲けたほうが合理的でしょう?という考えの結果だし、雪印による食中毒原因の隠蔽も、それを公表した場合にかかるさまざまなコスト(過去の信用をすべて失うかもしれないし、同社をとりまくすべての利害関係者をつぶしてしまうかもしれないなど)と比較して、隠し通せる可能性はゼロでない、だから隠し通すほうが合理的だ、という判断の結果だという。
馬鹿なこととはわかっていながらそれをやるしかない人間の悲しさ。経済・経営に関するの本なのに、人間に対するもの悲しさを感じてしまった。
この「エージェンシー理論」「取引コスト理論」「所有権理論」は、ものごとを考えるツールになるような気がするので、これを知るだけでも得をした。実はいまいる会社を辞めたいのだが、そのまま居座っているのは、それをやるコストが大きい(探さないといけないし、ちゃんとみつかる保証もないし、よりよい職場であるかもわからないしね)からにすぎないんだろうなとか、上司の不条理な指示をも我慢するのは、反発するコストよりはまあ我慢のほうがコストが低いという判断があるんだな、とかいろいろ当てはまる。こういう忍耐が、トップをのさばらせているのだろうと反省はするのだが。また、いまいる会社は、どうせ顧客にはわからなから、という考えがひどく多い会社だなという気もしていたので、情報の非対称によるモラルハザードを論じたエージェンシー理論も腑に落ちるものだった(腑に落ちるのも問題だが……)。