秋田の新設の公立大学でありながら高い就職率を誇り、入学偏差値も鰻登りの国際教養大学について、学長が多少の自慢も交えながら説明している本です。
実用に耐えうる外国語教育、教養教育の再評価、24時間利用可能な図書館などの施設、留学の義務化、単位認定の厳格化など大学教育を考える上でとても考えさせられるし、自分の学生時代を考えるとうらやましくもなりました。特に教養教育を重視する姿勢は、大学においても就職に直結するような知識ばかりを短絡的に求める嫌いなしとは言えない最近の状況に対して、広く教養を授け、人格を陶冶しようとするもので共感できました。
ただ他方で、全ての授業を英語で実施する(日本語の授業を全く実施しない)点については、明治維新期に右も左もわからない中で欧米の言語を読み解き、数十年・百数十年を経て自分たちの言語(日本語)で書物を書き、授業をできるまでになった学問的蓄積を全く顧みないようで少々釈然としないし、また原則として全教員を任期制の下におくことに疑問を感じていない様子なのにも賛成できません。特に後者については、本文の中でも文科次官に褒められた話が出てきていて、実際にも文科省の方針に合致するものだろうと思いますが、詰まるところ教員の立場を不安定化して大学(執行部)に、ひいては文科省に対して従順な人間しか残れないのではないか(実際、他の大学では文科省が大学教員の任期制導入を強硬に推進し始めてからこれに起因する不当な雇止めも多発し、訴訟になるケースも珍しくありません)、さらに心配なのは3年という短い期間を区切ってしまって、教育面はともかく研究面で落ち着いて結果が残せるのか疑問が残ります。本の主題が「なぜ、人材は育つか」ですから、教育面にスポットライトが当たっているのは当然としても、大学である以上、研究がどうなっているのかも気になります。どうも読み進んでいくと教員に対する評価も教育がメインとなり、研究が二の次の感が否めません。もしそうであれば、任期制とも相俟って、他大学が費用をかけて研究者に研究をさせた成果を、一定の期間その研究者を雇うことで利用し、その研究が古くなって陳腐化すれば任期満了とともに外部に放出する(テニュア制もあるようなので全てが全てではありませんが)、すなわち自分たちでは費用もかけずリスクもとらないでおいて、他大学がかけたコストの一部をいいとこ取りしているような気もしました。また、全体を通して筆者が“グローバルスタンダード”というある種得体の知れないものに盲目的なまでに合わせようとし、逆に日本にそれに抵触するような習慣などがあれば何ら迷うことなく切り捨てて悔やむところなしといった様子が感じられ、違和感を覚えました。
と、まあ、色々と疑問や不満もある内容ですが、授業のやり方にせよ教員の採用の仕方にせよある意味でかなり極端を行っているだけに大学というものを考えるよい材料になること、また就職率に端的に表れているようにこの大学が一定の成果を上げていることなどを考えると一読の価値は大いにあると思います。