本書の著者は東京消防庁に1956年に入庁、東京都内の各消防署長を歴任。約40年間の消防生活を経験した人。
本書の第2章の「北陸トンネル火災」は、平成16年にNHKの「プロジェクトX」で放送されたとのこと。
本書の中で最も印象深かった言葉「消防活動は、即時即決。右か左かの2つに1つの決断しかない」である。
9・11テロを契機に、著者が古い災害ファイルを開いた事が本書を著した動機という。
第1章の「川崎市金井ビル火災・S41年」では、予算を通して、やっと入手できたナイロン・テープを使用した人命救助が書かれていた。
著者はこの章の中で「目に見える箱モノづくりに熱心な首長、票にならない消防行政には見向きもしない議員、「ウチに限って・・」と火事を他人事のように見ている住民」に対して批判している。後に川崎市に悲願の「消防特別救助隊」が発足し、東京消防庁にもS44年に「消防特別救助隊」、「国際消防救助隊」が結成されていく経緯が理解できた。
「北陸トンネル火災」「福島磐光ホテル火災」「広島呉市の山火事」「谷川トンネル火災」「神奈川玄倉川水難事故」
の各火災・災害現場の様子と救助の模様が、第2章以降、順次ドキュメンタリータッチで綴られている。
文章は、臨場感あふれる会話の部分が多く、少し読みにくいかもしれない。その点で★4にとどめた。書かれている内容自体は濃い。
各章の災害で、特徴的な問題点「雑居ビル」「レジャー産業の利益重視・安全軽視」「旧国鉄の体質」等が取り上げられていた。
消防士・救助隊は「人命を救って当たり前」で、犠牲者が出れば非難の的となり強く批判される。
消防士の中には、「惨事ストレス」で心を病む人が多くなっているという。
悲惨な災害現場で活動する消防士も、被災者と同様の強い精神的ショックを受けるが、職業的責任により忌避できない立場から一般の被災者とは異なる心理的影響を受けるそうだ。この問題を重要視した総務省消防庁では、消防士の心のケアにのりだしたという事も紹介されている。
先日の福島原発の注水作業に関わったハイパーレスキュー隊の方々の記者会見を見ていて、こちらにも強く胸にこみ上げるものがあった。
どれほどの緊張感と覚悟を強いられたことだろうか。また作業に関わった方々のご家族の心労は想像に絶するものがある。
ハイパーレスキュー隊の他にも、機動隊、自衛隊、各方面の救助隊、現場で作業を続けられている方々の、無事を祈ると同時に、日夜関係なく災害に立ち向かって尽力されている事に、心より深く感謝したいと強く思った。