近作ではポスト・ロックへの接近が目立ったエゴ・ラッピン。中納嬢の力強い歌唱に惚れ込みファンとなった者としては、
彼らの関心が音響にシフトするにれ、歌のスケールが何となくこじんまりとし、音楽も敷居の高いものになっていくのを
感じ、彼らへの関心が薄れ気味だった。しかし今作の発表にあたりインタビュー上で彼女の「今回、むっちゃポップなん
です」という発言に再び新作を手に取った。
いや〜本作は最高!中納嬢のボーカルの爆発力が戻るどころか昔より力を増し、何より音楽自体、小難しさを感じず
親しみ易いものに戻ったのが嬉しい。といっても以前のジャズ・昭和歌謡路線に先祖帰りしたわけではなく、彼らのバン
ド演奏の躍動感を最大限に活かし、収録曲を10曲に絞り込んだにも関わらず音楽嗜好の幅広さを感じさせる。
まずノリの良さが高印象。「デットヒート」冒頭のドラミングが導く、ロカビリー調のゆったりしたグルーヴが最高に心地良
く、さらにその上で暴れまくる中納嬢の歌声が痛快だ。時にしゃくりあげ、叫び、囁き、歌い上げる多彩な表現を持つ歌の
存在を最前線に押し出している。この曲に限らず、本作では一貫して「まず歌ありき」の姿勢を感じる。
その他「Bell 5 Motel」で絶えずリズム・チェンジを繰り返し疾走する歌とバンド演奏、ジャズ風味の洒脱なミディアム・ス
カ「Love Scene」でも決して御行儀よくまとまらない彼女の大胆な歌唱等、聴き手に即効性のあるノリと輪郭が明確な旋
律を含んだ秀曲・名演揃いだ。
本作を優れたものにしているのは、即効性と「スルメ的要素」を兼ね備えている処。「Bell 5 Motel」での複雑な楽曲構造や
音仕掛けは聴く度に発見があるし、「スカル」の浮遊感、「キリがない」の緻密なボイス加工等、近作でのポスト・ロックへの
研究で得た成果が随所で活かされている。しかし近作との決定的な違いは、それらを押し出し過ぎずあくまで歌を引き立
てる一要素に留めた絶妙な平衡感覚だ。結果聴き手は歌と音楽をシンプルに楽しめる仕掛けになっている。
彼らの特長であるライヴでの爆発感がスタジオ録音に上手く反映された傑作だ。自分と同様な理由で彼らの作品から離
れていた方がいたら、是非試聴をお薦めしたい。