素晴しい1冊です。これ1冊でいいのではないかという本です。初心者の方には投資を始める前に是非お読みいただきたい1冊であり、全ての個人投資家に捧げる1冊と言えるのではないでしょうか。
この著者の「ど素人が読める決算書の本」を読んだのがきっかけで本書に出会いましたが、これ以上的確にかつ分かりやすく投資そのものについて、投資信託について、解説している本を見たことがありません。私自身、大学を出てからずっと金融業界に身を置き、長年投資・運用の世界で生きてきましたが、本書を読んで目が覚めるような思いがしました。若手社員たちにこの世界のことを教えるのに四苦八苦してきた身としては、こうやって説明すればいいのか、こういう例えがあったか、と自分の説明の拙さを恥じるばかりでした。この本を知った今は、「とりあえずこれを1冊読め」と言って本書を薦めています(職責放棄の感はありますが、残念ながら自分にはこの本以上の説明ができるとはとても思えませんので。)。
昨今の投資ブームで本屋に行けば個人投資家向けの投資の本や投資信託の解説本がところ狭しと並んでいますが、ハッキリ言っていい加減な内容のものが多く、よくもまぁこんなことを言えるものだと呆れてしまうものも少なくありません。おおよそ専門家とは思えないような方が書いた本も多く、専門家ではないにしても、そもそもの投資の原則や投資信託の基本的な性格を明らかに勘違いしているとしか思えないような内容を堂々と説明しているのには閉口してしまいます。若手社員達から、勉強をしたいのでいい本を紹介してほしいと頼まれて本屋に探しに行っても、とても薦められないものが多いばかりか、内容が不正確であったり、いい加減であったり、しかもそれらが「大増刷!」となっていたり、というのを目にして、むしろ日本の個人投資家は大丈夫だろうかという憂慮を抱いてしまうほどです。
本書は、いみじくも著者が本書の前書きで「とりあえずこの本1冊読んでみて。必要なことは全部書いてあるから。」と書いていらっしゃるように、投資の基本、投資信託の基本的な構造・性格について、分かりやすく丁寧に書いてある本です。初心者でも充分理解できますし、何より内容が正確であり、説明が的確であり、本書を読めばしっかりとした基本を身につけることができると思います。おそらくこの本を読んだあとでいい加減な内容の本を読んだり、誤った理解をしている人やよく知らずに専門家と称している人の解説を聞いたりすれば、それらの間違いに簡単に気づくようになるはずです。また、不適切な投資推奨や勧誘で不本意な投資をしてしまったり、高額のいかがわしい必勝法を買ってしまったり、勘違いをしたまま投資をしてしまったり、ということを避けることができるはずです。また、投資信託を購入した後での「なんで?」も解決できるはずです。
初心者の方、これから投資をしてみたい方、投資の基本を学びたい方、お金のことを考えてみたい方、には是非御一読いただきたい1冊です。また、既に投資をしている人にも、そして個人投資家に投資信託を販売する職にある方にも、是非お読みいただきたい本です。既に投資をしたことのある方、投資信託を実際に販売していらっしゃる方、にはまっさらな状態の心でお読みいただきたい本です。おそらく既に投資について何かしらの知識のある方は本書を読んでいて「え?」「そうなの?」と思う箇所が出てくるはずです。そういう時に、今まで自分が知っていた情報と本書の情報のどちらが正しいのか、実際の市場に当てはめてどちらが現実を説明しやすいのか、実際の運用成果をどちらがより正確に説明してくれるのか、をまっさらな気持ちで比較してみてください。
著者が本書で書いているように投資に正解はありません。しかし、これまでの研究成果から有効と考えられているアプローチはあります。この点は医学や薬学と似ています。まだ分かっていないことも多く、そうしたアプローチも「現時点の人類が分かっている範囲で」という条件つきのものです。それでも、オカルト的なものとは一線を画している、ある程度信頼できるアプローチというものが存在しています。一方、投資信託の構造や仕組み、分配金の性格や経済効果、市場の取引ルール、インデックスなどのツール、などには正解や正しい説明が存在します。これらを正確かつ分かりやすく丁寧に説明してくれているのが本書です。
決算書の本と併せて、良書の少ない分野での貴重な良書だと思います。著者に敬意を表してレビューを書かせていただきます。