本書の特徴は「余計な負荷をかけない英作文トレーニング」に尽きる。
つまり「話すための文法」能力を鍛えるために、それ以外の機能を削ぎ落としたということ。
これまで英語関連の教材は何冊も買ってきたが、どれも本書が批判するところの「欲張り」だったと思う。
つまり、構文、気の利いた表現、ボキャブラリーの増加…等々、なんでもテンコ盛りに入れてしまうから、肝心の「話すための文法」能力に気がまわらないのである。
その点、本書は平均的な知識レベルの大人であれば、常識的に誰もが知っている程度の単語しか使っていないため、目的特化型でたいへん良い。
リーディングは苦にしないが、満足にリスニングやスピーキングができない私にとって、本書は画期的な転換をもたらしてくれました。
(1)スピーキングを鍛えることで、中学レベルの英文法知識がクリアになった。
(高校レベルの瑣末な英文法知識はスピーキングに不要だと実感できた)
(2)スピーキングを鍛えることで、うれしいことにリスニング能力もあがった。
(文の構造上、どこに耳神経を使うべきか、少しずつツボがわかるようになったので)
(3)「和文→ポーズ→英文」の順に音声が流れる教材の利点がハッキリわかった。
(英文しか入ってない教材を使うべきだという意見も多かったし、それに固執していたから、かえって非効率だった)
(4)英語の勉強をするのが楽しくなった。
(これが一番大事)
他の方の否定的なレビューでは、「使われている例文が不自然。普通、そんなふうには言わない」等の指摘もあります。
そもそも不自然な例文は少ないと思いますが、しかし、言わんとしていることも理解はできます。
ただ、「それこそレベル3の発想ですよ!」と私は言いたいのです。
つまり、気の利いた表現やら、より自然な表現よりも、何よりも、まずは文法的に正しくて、きわめて無難な土台をスピーディに作り上げるレベル1の教材を意図しているのですから、その意味でまったく看板に偽りのない良心的な本だと思います。
レベル3のニーズを持つ方が本書を手に取って不満を持つというのは、最初からニーズに合致した買い物をしていないからだと思いますよ。
そもそも、私たちが使う日本語で考えてみても、普通はそんなふうには言わない、でも文法的に正しいという表現はいくらでもあるでしょう。
たとえば、手元にある他の単語集から例を拾い上げましょう。
His sickness is a fakeという英文に「彼は仮病を使っている」という訳文が付いています。
日本語としては自然ですが、「彼の病気はニセモノです」という表現のほうが、文法的によりベーシックで、良心的な訳文だろうと思います。
それの裏返しで、通常そんなふうには言わないだろうという英文であっても、レベル1の英語学習者にとっては、無難で、教科書的で、ぎこちないけれども実直な表現のほうが良いはずです。
高校生ぐらい、いや、せめて大学生ぐらいで、この教材に出会っていれば…!
20年ぐらい遅いけど…。
でも、本当にありがとう。