かつてのジュヴナイルを思わせるローティーン向けSFシリーズ、「ボクラノSF」の一冊。このシリーズ、どうやら本書以外は復刊のよう。
この著者の持ち味といえば、常識というか世界を認識する大前提を揺さぶられるディックの作品のようなあの読書経験を、空気系ともいうべき日常の描いた世界のなかで味わわせること。その舞台は、すこし・不思議(すなわちSF)な世界。
少女型アンドロイド(物語ではセルロイドと)にしてイベントコンパニオン、アリスの一人称で語られる物語の舞台は、人が姿を消した泥だらけの世界。アリスは宣伝する商品、亀型ロボット(レプリカメ)の万年一号とともにどろんこの世界を旅し、人の行動をなぞる泥人形のヒトデナシとともに人間の姿を探し求める。
模造亀(レプリカメ)もヒトデナシも泥だらけの世界も、北野作品(『
かめくん』、カメリ・シリーズ)ではおなじみのモチーフ。ティーン向けのためか、いつもは解説されない作品世界の姿が、登場人物のひとりの口から語られることがかえって新鮮。もっとも、それが全貌でも事実でもないのかもしれないけど。(何せ結末にどんでん返し、すごく地味な)
世の中何が正しいのか判らないけど、前には歩いて行きたい(かつて少年だった)大人たちにお勧め。もちろん少年たちにもおすすめ。前向きな気持ちにさせてくれる一冊。