同人歴の長い作者のデビュー作であり、年季のはいった百合哲学が感じられる。
甘えたり、頼ったり、ねだったり…。恋愛や友情であれば距離をはかりながらする行為を、無条件で与え、受け取りあう特別な関係としての「姉妹ごっこ」をモチーフにした話。少女の閉じた世界をテーマにした物語は数多いが、「最愛の実の姉/偽の姉」という設定が、主人公・初雪の世界の特別さを鮮明に印象づけている。
千葉が独立して王国になっているとか、姉の仕事が軍関係であるといった派手なネタはとても抑え目にかかれている。どこにでもあるような商店街のはずれの古書店が舞台であることや、文(あや)が少ない小遣いをやりくりして通ってくる、テストの日はお弁当を学校で食べて帰ってくるか?といった質素であたたかい日常の描写と独特のコントラストをつくっていて、読んでいてとても気持ちがよい。
難点をいえば、タイトルである「どろぼうの名人」がでてくる必然性がいささか弱いのが残念。